商品を入れ替える田中（仮名）

青森県がいくら北国で寒いとはいえ、もうそろそろ冬物はしまわなくてはならない。
田中に「冬物の帽子をしまってくれ。」とお願いした。
私は別な仕事をしていたので作業は見ていない。
しばらくすると田中がやって来て言った。
「冬物の帽子ってどういうやつですか？」

この質問はくるだろうと予想していた。
私は帽子を裏返し品質表示の部分を示して「ウールって書いてあるやつをしまって」と田中に言った。
田中にもわかりやすい完璧な答えだと思ったが、少し間を空けて田中は言った。

「ウールって事は羊（ヒツジ）って書いてるって事ですか？」

間違ってはいない。確かに羊毛と書いた物もあるかもしれない。
まだ一つも見ていないのに余計な事は考える男だ。
羊もしくはウールと書いてある物をしまってもらう事にした。

またしばらくして「終わりました！」と田中の声。しまった物をみてもほぼ完璧だ。
一年も経つと田中の扱い方もうまくなるものだと満足した私は次の指示を出した。
「じゃあそれを田中部屋に置いて、薄手の帽子を持ってきて！」

さすがに春物は品質表示では説明出来ないが、在庫が残っているのは春夏物の帽子なのでそんなに変な物は持ってこないはずである。

しばらくして戻って来た田中は3月にもかかわらず、ダンボールに麦わら帽子を入れてもってきた...。